調査・研究事業(継続中)
「1960年代における領域横断的芸術と空間についての調査・研究」
概要:
本調査・研究は、1960年代において領域横断的な表現を展開した作家・グループを支えていたギャラリーやスペースに焦点をあてることで、個別の作家・作品や各芸術分野の研究では扱うことの難しかった拡張的な表現の可能性を再検証することを目的とする。当時の芸術分野の垣根をこえた表現は、それらが発表されたギャラリー、スペースの実験精神とその運営に大きく依拠していた。展覧会、上映会、上演といった既存の形式のみならず、特集期間を定めたイヴェントや偶発的なパフォーマンスの開催によって、芸術や作品という概念を根底から問い直す新たな表現の場を提供した。こうした潮流は、既存の作家作品研究の枠組みでは捉えきれないため、映像や写真といった記録物、関係者による証言、当時のポスター、チラシ、芳名録、また自主刊行物、専門誌、大衆雑誌などの紙資料を通して、人的交流、文化・芸術史的な背景を明らかにしていく。
助成:
シンポジウム「日本戦後芸術をめぐるアーカイブの実践的研究」(共催事業)
2023年3月16日
東京文化財研究所にて開催
主催:JSPS科研費JP21H00499「デジタルアーカイブ時代における1960−70年代の芸術表現の拡張に関する研究」
JSPS科研費 JP18K00200「ポスト1968年表現共同体の研究:松澤宥アーカイブズを基軸として」
概要:
ここ数年にわたり、国内外で戦後日本芸術の作品、資料をめぐる調査や保存活動がさかんに取り組まれている。今回は2つのセッションによって、映像表現と美術表現におけるさまざまなアーカイブについての実践的研究を具体的に紹介しながら、ジャンルを横断した拡張的実験を特徴とするこれらの作品や資料をどのように調査、修復保存、保管、そして現在的に活用していくことができるかを考えていきたい。
セッション1「1960-70年代を中心とした実験映画、アンダーグラウンド映画のアーカイブとその可能性」
パネリスト:
足立・タッシュ アン(コラボラティブ・カタロギング・ジャパン[CCJ]代表)
「CCJの実践」
松 房子(TAKU FURUKAWA ARCHIVE運営)
「アニメーション・アーカイブの実践」
平沢 剛(明治学院大学言語文化研究所研究員/映画研究者:進行兼)
「アンダーグラウンドとアーカイブの非親和性」
セッション2「資料から探る戦後芸術の足跡」
パネリスト:
三上 豊(東京文化財研究所客員研究員/編集者)
「アトリエを書籍と画像で記録する」
三上満良(元宮城県美術館副館⻑/近現代美術研究者)
「資料調査と展示から探る糸井貫二(ダダカン)」
松山ひとみ(大阪中之島美術館アーキビスト)
「作家資料保管者としての美術館」
進行:細谷修平(和光大学客員研究員/美術・メディア研究者)
糸井貫二木版画展
2023年3月6日~3月11日
ギャラリーヤマトにて開催
主催:ダダカン連、一般社団法人 戦後芸術資料保存
ギャラリーターンアラウンドで開催した「糸井貫二木版画展」の東京巡回。
この展示にあわせて、『糸井貫二木版画集』を刊行した。
*artscapeレビュー、執筆:伊村靖子
https://artscape.jp/report/review/10183871_1735.html
糸井貫二木版画展
2022年10月12日~10月22日
ギャラリーターンアラウンドにて開催
主催:ダダカン連、一般社団法人 戦後芸術資料保存
糸井貫二が制作した木版画を整理・分析し、多数展示。
また、同時代に糸井らによって仙台で行われていた「俳石」の活動も紹介した。
【同展関連イベント】トーク「糸井貫二と木版画」と作品特別鑑賞会
三上満良氏(元宮城県美術館副館長)による糸井貫二の木版画制作と作品、時代背景などをめぐるトーク。会場に展示できなかった作品も観客に紹介した。
| 法人設立前のメンバーの活動
書籍編集
国際交流基金 企画・監修『ヴェネチア・ビエンナーレと日本 1952-2022』(平凡社、2022)
ウェブサイト:https://venezia-biennale-japan.jpf.go.jp/j/news
三上が編集を担った。
本書は日本の参加70周年を機に刊行するもので、歴代の日本代表作家に加え、企画展や他国パヴィリオンに招待された作家も含め、これまでにビエンナーレの舞台に立った約180名の作家を一挙に紹介する。
「1960年代——ダダカンと儀式屋たちの時代」展
2021年12月14日〜21日
IRREGULAR RHYTHM ASYLUM
主催:一般社団法人NOOK
ウェブサイト:https://1960dadakan.wordpress.com/
細谷と平沢がキュレーション。
糸井貫二(ダダカン)を中心として、同時代にパフォーマンス表現を展開した〈ゼロ次元〉、〈告陰〉、ビタミンアート(小山哲男)らの活動を当時の資料や写真記録、インタビュー映像などを活用して紹介。
また、美術家の中島由夫氏が飛び入りでパフォーマンスを敢行した。
【同展関連ギャラリートーク】
2021年12月17日
IRREGULAR RHYTHM ASYLUM
細谷と中西(大谷)が、作家たちへのインタビューを振り返って客席とともにトーク。
「ナラティブの修復」展
2021年11月3日〜2022年1月9日
せんだいメディアテーク開館20周年企画展
主催:せんだいメディアテーク(公益財団法人 仙台市市民文化事業団)
ウェブサイト:https://www.smt.jp/projects/narrative/
グループ展に〈ダダカン連〉のメンバーとして、細谷と中西(大谷)が三上満良氏(元宮城県美術館副館長)と関本欣哉氏(ギャラリーターンアラウンド オーナー)とともに参加。
「絶対的自由と絶対的肯定の人・ダダカン 糸井貫二の日々 〜資料アーカイブ構築に向けて」と題して、糸井貫二のさまざまな資料を整理・分析し、写真・映像記録などとあわせて展示した。
【同展関連上映会】映画『いなばの白うさぎ』
2021年11月20日
せんだいメディアテーク 7f スタジオシアター
上映に関わって三上満良氏、細谷が資料群をめぐる口頭発表。
書籍編集
東京美術倶楽部 編、酒井忠康 監修『日本の20世紀芸術』(平凡社、2014年)
ウェブサイト:https://20th-century-art.heibonsha.co.jp/
三上が編集を担った。
絵画・彫刻・工芸をはじめ広く視覚芸術全般に渡り、その歴史的な流れを1000人を超える作家とその作品により俯瞰的に紹介した事典。